Column
2023.11.26
DESIGN
「高級感」とは、
・品質が良く、ものの作りが優れているさま
・ものの作りがよく良質だという印象を抱かせる雰囲気
・ものの品質などが高価に思われること
を示すもの。
その他にも、以下のようなキーワードがイメージされると思います。
高級感やラグジュアリーなデザインが使われることが多い業態においては
商品やサービスだけでなく、そのコンセプトや空間づくり、雰囲気などもカスタマーが期待する重要な要素となります。
このような業態でラグジュアリーデザインを採用することは、
そのブランドやサービスの独自性を強化し、カスタマーに対してその商品やサービス以外でも、
高い付加価値を提供する効果的な手段となる可能性があるのです。
ホテル業界は、高級感のあるデザインがマッチする業態の一つ。
ラグジュアリーな宿泊体験を提供するホテルは、その建物や客室、共用スペースなど、
高級感あるデザインで統一されていることが多いですね。
その一番の理由は、洗練されたデザインや上質な素材は、訪れるカスタマーが求める
「非日常の宿泊体験を楽しみたい」という期待に応えることができるから。
また、統一された高級感のあるデザインは、ブランディングにも役立ちます。
エレガントさやラグジュアリー感を感じさせるデザインは、そのホテルが高品質で
より優れたサービスを提供してくれるという印象を与え、ブランド価値を高めているのです。
一定以上の価格帯の化粧品にも、高級感のあるデザインは欠かせません。
特にハイブランドの化粧品は、美や健康を求めるカスタマーが、高い期待を抱いて購入するもの。
高級感のあるデザインは、そんな期待に応え、品質や効果に対する信頼性を高める役割も担っています。
また、ラグジュアリーなデザインやパッケージは、商品の魅力をより引き立てます。
「商品を手に取ってみたい」そんな購買意欲を刺激する一因にもなりますね。
アパレル業界も、高級感のあるデザインと親和性が高い業態です。
高価格帯のアパレルブランドは、材料の品質や製造の過程にも高いこだわりがあります。
高級感のあるデザインは、素材やクオリティ、コンセプトを強調します。
ブランドとしての信頼性を高めるためにも、そういったデザイン展開が効果的と言えるでしょう。
身につけるアパレル製品は、着用する人のラフスタイルや価値観を表すと言われているように
エレガントでラグジュアリーなライフスタイルを表現したい人をターゲットと想定すると、
高級感のあるデザインは外せないテイストだということが分かります。
また、ハイブランドの商品は流行に左右されにくく、長く愛用できる点が特徴。
そのため、高級感のあるデザインは普遍性のあるデザインであるとも言えるのではないでしょうか。
では、高級感のあるラグジュアリーなデザインに惹かれる女性のターゲット像とはどのようなものでしょうか?
ハースト婦人画報社が発行している女性向けファッション誌の中で
他社と比較しラグジュアリー路線を強く打ち出しているのが、「ヴァンサンカン」と「婦人画報」。
この2誌を参考に、ラグジュアリーなデザインに惹かれる女性像を具体化してみましょう。
新時代の“エレ派”に贈る ラグジュアリーマガジン
価値観やライフスタイルが大きく変わりゆく今、
あらためて『25ans』のDNAである”王道のエレガンス”を追求し、
性別や年齢にとらわれない新時代のラグジュアリーを発信致します。引用:ヴァンサンカン媒体資料
媒体資料によると、ヴァンサンカンのコンセプトは
「リアルなラグジュアリー”を提案する、エレガンス派女子(エレ派)の ための華やかなファッション&ビューティバイブル」。
読者層は都市部在住の有職者が過半数を占め、平均年齢や世帯年収などは他雑誌と比べ高めに設定されています。
一方で以下のような価値観も大切にするなど
・家族とのコミュニケーションを大切にしている
・自分への投資は惜しまない
・社会貢献&チャリティへの活動を惜しまない
・目指すスタイルはオーダーで手に入れる
「自分自身の考え方をしっかりと持ち、知性と行動力に溢れた女性」がペルソナとして描かれています。
本文化の継承と女性の 生活を豊かにするための提案
『婦人画報』は今後も「食」「旅」「モノ」「文化」などの“和”の コンテンツと、
「ファッション」「ジュエリー」「美容」の“女性の生 活を豊かにするため”のコンテンツを二本柱にして、 読者の求める“信頼できる情報”にさらに磨きをかけ期待に応えます。引用:婦人画
媒体資料によると、婦人画報の読者層は
40〜50代の女性読者が中心で、かつ社会的に自立した女性が多い点が特徴です。
「教養あるラグジュアリーを好み、価値に対する投資は惜しみません」
という価値観を大きく打ち出しています。
世帯年収や総資産額も高く、モノ消費だけではなく、
ライフワークや体験など、旅行や飲食などのコト消費についても積極的。
また家族構成の変化に伴い、住まいや暮らしへの関心も高いというデータを示しています。
その他にも、ラグジュアリーデザインに惹かれる女性全般としては
以下の特徴も挙げられるでしょう。
・素材の質や製法にこだわりがある
・トレンドに左右されないクラシカルなスタイルが好き
・デザイナーやブランドストーリーなどに共感したい
・自己表現をすることや自己投資に興味がある
・社交的で社会活動にも関心が高い
高級マンションに住み、一流シェフの店のフルコースを堪能。
シャネルやルイ・ヴィトンなど海外のインポートブランドに身を包み、
旅行では五つ星ホテルに宿泊、もちろんアクセスはビジネスクラスやグリーン車で。
ラグジュアリーな生活、と聞くと、一般的に上記のようなシーンをイメージするのではないでしょうか。
「高認知=どれだけの人が知っているか」「高価格=いかに値段が高いか」
という、分かりやすいゴージャスさを全面に出す「高級感」から、
表現はあえて控えめに、本質的なラグジュアリーを追求する
「クワイエット・ラグジュアリー」という価値観が新たに注目されています。
価格にとらわれず、自分自身が心豊かな気分になるもの
製品が生まれたストーリーや、素材にこだわりがあり、「人の手」が感じられるもの。
派手で目立つデザインや、一目でハイブランドとわかるロゴは控えめに、
抑えた色や柄で素材の上質さを引き立て、穏やかな上質感を表現する
「クワイエット・ラグジュアリー」は、主にファッション業界で注目をされていますが、
シンプルなデザインと、ものの上質さを掛け合わせるという考え方は、
ファッションの世界だけでなく、今後のデザインの傾向としても一つの主流となっていくのではないでしょうか。
高級感のあるデザインや、新しいラグジュアリーの考え方についてお話してきましたが、
実際に高級感を与えるWebサイトをデザインする際の4つのポイントについて解説していきましょう。
写真や映像はユーザーの目をひきつけ、サイトの世界観やバックストーリーを
一目でダイレクトに伝えることができます。
まるで自分がその場にいるような臨場感、自分もこうでありたいと思わせてくれるような世界観。
商品を訴求するサイトであれば、写真や映像を通して作り手の思いや質の高さを伝え、
サービスや理念など目に見えないものに対して高級感を感じてもらいたいのであれば、
被写体の選定や撮影時の演出で表現することが可能になります。
ジャンプ率とは、デザインを構成する要素の大きさの比率のこと。
左側はテキストのジャンプ率が低く、右側はテキストのジャンプ率が高くなっています。
ポップなテイストで見出しなどを目立たせ、インパクトを出したい場合は、右側のようにジャンプ率を高くすると効果的ですが、
今回のような高級感のあるデザインでは、ジャンプ率を低くすることがポイントです。
ジャンプ率が低いと、文字サイズの差が小さいため「落ち着いた」「静的」な印象を与えることができます。
また、視線誘導をコントールしやすい高いジャンプ率と異なり、視線が誘導されないため、
そのため内容をじっくり見て欲しい場合や、全体として世界観を伝えたい時に効果的だといえます。
参考:花紫Webサイトhttps://www.hana-mura.com/
文字情報は小さくコンパクトにまとめ、全体的に文字のジャンプ率を低くし、
余白を設けることで上品さや繊細さをより際立たせる効果があります。
白のスペースを生かしたシンプルな構成は、澄みわたる空気、凛とした静けさを表現し
上質なサービスを感じさせるWebサイトです。
和文フォントは明朝体、欧文フォントはセリフ体の方が高級な印象になります。
繊細なスクリプト体を装飾として使用しても効果的です。
明朝体は太さの違う横画と縦画、ウロコやはね、はらい等のアクセントが
抑揚を生み気品やしなやかさを想起させます。
このため、高年齢層向けの穏やかなイメージや格調高い雰囲気、
または女性的なやわらかさを表現するのにも適しています。
一般的にゴシック体よりも明朝体の方が高級感を表現しやすいですが、
必ずしもゴシック体がNGというわけではありません。
細みのゴシック体やサンセリフ体はモダンで繊細な印象を与えることができますし、
行間や文字間を広くとったり周りに余白を作ることで洗練された印象を与えることも。
写真を組み合わせる場合は、細めのフォントで写真を強調することで、
余裕のあるエレガントなデザインを表現することも可能です。
彩度や明度を抑えた配色は、落ち着いた印象となり、高級感のある演出が可能です。
彩度の高い色を使用したい場合は面積の割合を小さくしたり、ワンポイントに使ったり、
明度をあげながらバランスを調整するなどの工夫をすると良さそうです。
白やパールなど明度が高いと上品な高級感、黒やグレーなど明度が低いとラグジュアリーな雰囲気、など
配色によって様々な「高級感」を演出することができます。
いかがでしたか?
高級感のあるデザインは、いろいろな業態と親和性が高く、
押さえておきたいデザインテイストです。
高級感を演出するためには、何かを足すのではなく、何を捨てるかという引き算の考え方が大切。
色々と要素を足し過ぎてしまうと、エレガントさが失われ、
「ゴージャス」よりの、少し古い時代の高級感を醸し出してしまうことも。
ゆとりのあるシンプルさの中に、本質的な上質さを感じさせるデザイン。
そんな「クワイエットラグジュアリー」の考え方を取り入れた
高級感のあるデザインを心がけてみてはいかがでしょうか。
記事監修
デザイナー&イラストレーター Yuko Iwao