Column

2025.04.22

DESIGN

MARKETING

「映え」より「なじむ」が今っぽい!ゆる配色のススメ

 

 

「色」で女性のこころをつかむ

 

色がもたらすものは、単に「美しさ」や「心地よさ」だけにとどまりません。
私たちの生活を彩る色には、驚きや感動、時に深い印象を与える力があります。
そしてその影響力は、感情だけでなく、ものの見え方や感じ方にまで及びます。

 

明るい色を見れば自然と気分が高揚するように、色は私たちの心に強い印象を与え、気持ちを動かします。
たとえば、大事な商談がある日は気を引き締めるようなキリッとした色を、好きな人との約束がある日は華やかな色を、など
無意識のうちに、「気持ち」に寄り添った色を選んでいることも多いのではないでしょうか。

 

色使いひとつで商品の魅力をより強く印象づけたり、情報を区別したり、逆に統一感を演出することも可能。
色はその使い方によって、見る人に訴えるイメージや印象を自在に変えることができるからです。

 

 

WEBデザインにおける配色の考え方も同様です。
サイトを開いた最初の印象を大きく決めるのが、ぱっと目に入る配色や色のコントラスト。
女性向けデザインでは特に、「可愛い」「おしゃれ」「ときめき」など、感情に繋がる色が重要なキーワード。
日々変化する流行や世代のニーズに合わせて、女性デザイナーはどのように配色を考えているのでしょうか。
本コラムでは、WEBデザインの際の配色について、事例やデザイナーの声を交えながら
a世代、Z世代、ミレニアル世代など、それぞれの世代のこころをつかむ配色のトレンドを解説します。

 

 

【世代別】「好き」と思わせる配色とは? WEBデザイン事例集

 

「このサイト、なんか好き」「ついつい何度も見たくなる」・・・そんな感覚の裏側には、「色の力」が大きく関わっています。
とくに女性向けのWEBデザインにおいては、「かわいい」「落ち着く」「ワクワクする」といった“感情に寄り添う配色”が、ユーザーの共感や信頼につながるポイントに。

 

とはいえ、色の感じ方や「好き」の基準は世代によってさまざま。
本コラムでは、α世代・Z世代・ミレニアル世代、それぞれの感性にフィットする実際のWEBサイト事例をもとに、
どんな色づかいがその世代の「好き」をつかみ、共感を得ているのかを読み解いていきます。

 

【α〜Z世代】ポップさ、エモさ、レトロ感が「可愛い」を生む

 

PLAZA

主に20代の女性をターゲットとした商品構成が特徴で、 欧米から輸入した化粧品やキャラクターグッズ、雑貨などが主力商品。
郊外の大型SCではファミリー層や三世代での来店も多くなっているなど、中心層は10〜20代ながら、多岐にわたる年齢層の支持を集めている。
URL:https://www.plazastyle.com/contents/plazagift/

 

 

ブランドカラーである青を基調にしつつ、アイコンやボタンなどのアクセントにビビッドなカラーを部分的に配置。
全体のトーンはやわらかく、親しみやすさのなかに「かわいい」を突き詰めた配色バランスが特徴です。
ピクセル調の文字やロゴ、グリッドを強調したデザイン要素が、どこか90年代〜2000年代のY2Kカルチャーを思わせ、a世代〜Z世代の「レトロかわいい」感覚にフィット。
商品そのものの色合いとも絶妙にリンクしており、「見ていて楽しい」「思わずスクロールしたくなる」印象を色で演出するなど
感性に直接訴えかける直感的な配色が、若い世代にハマるWEBデザインとなっています。

 

 

KOKUYO「Campus」50th Anniversary

1975年の発売以来、学生やビジネスパーソンに広く愛用されている日本を代表するノートブランド、コクヨの「キャンパスノート」。
​そのシンプルで洗練されたデザインと、使いやすさを追求した機能性が特徴。 URL:https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/feature/campus/50th/

 


特に、α世代やZ世代、ミレニアル世代の感性に響く「くすみカラー」や「パステルカラー」を基調としたデザインを採用。
柔らかく落ち着いた印象を与えつつも、そのバリエーションの豊富さから、個性や感情を表現できるため「わたしらしさ」を求めるα世代〜Z世代にぴったり。
ノートという学生が日常的に使用するアイテムは、単なる文房具ではなく、自分らしさを表現する手段のひとつ。
α世代〜Z世代の若者の感性やライフスタイルに寄り添ったプロダクトとしての価値を高めています。

 

【Z〜ミレニアル世代】ナチュラル、ニュアンス、洗練。あいまいさや程よいリラックス感が共感を呼ぶ

 

HufMug(ハグマグ)

『HugMug(ハグマグ)』はWeb・雑誌で情報を発信する、ママ・パパに向けたライフスタイルマガジン。
トレンドのファッションやビューティ、センスのいい家など日々のライフスタイルを楽しくおしゃれに彩る今どきファミリーに向けた記事を配信。 URL:https://hugmug.jp/

 

 

ベージュやライトグレー、ホワイトといったニュートラルな色を基調にしており、ナチュラルで温かみのある印象。
メインターゲットであるミレニアル世代が求める「リラックス感」「シンプルさ」「心地よさ」を反映したデザインです。
同系色でまとめつつ、ページによっては大胆なアクセントカラー使いもあり、より洗練された印象を作り出しています。

 

 

BOTANIST

ユニセックスでインテリアになじみやすいパッケージデザインや、植物と共に暮らすというコンセプトでナチュラル志向の若い世代のこころをつかんだボタニスト。
「ボタニカル」という独自の世界観でライフスタイルに寄り添った商品展開が人気。
URL:https://botanistofficial.com/special/limited/25spring/

 


無駄を省いたシンプルさと、細部へのこだわり。 ボタニストの商品ラインナップにも通じる、季節感を感じさせるWEBデザイン。
春らしい濃淡のあるピンクをメインに構成された配色は、洗練された印象を与え、ミレニアル世代が好む「余白の美」や「余裕のあるデザイン」が表現されています。
春の訪れを感じさせるビジュアルと共に、製品の世界観を存分に表現し、感性に訴えかけるデザインとなっています。

 

 

SINN PURETE (シンピュルテ) 内田理央×SINN PURETE

日本生まれのオーガニックとサイエンスを融合した肌も心も喜ぶハイブリッドナチュラルスキンケア。
シンピュルテのブランドコンセプトである、美しさと心の豊かさを追求する「MINDFUL BEAUTY®」を体現した、 内田理央さんとSINN PURETÉのコラボレーション。
URL:https://sinnpurete.com/Page/collab-riouchida.aspx

 

 

くすみ感のあるブルーに透明感・清潔感を感じさせる動画・画像の組み合わせで、 自然体で飾らない美しさを求めるミレニアル世代のこころをつかむデザインに。
ブルーには冷静さや安心感を象徴し、ブランドの信頼性を高める効果も。
全体的にポップな要素を取り入れつつも、過度な装飾を避け、落ち着いた雰囲気を保つことで、視覚的な心地よさと親しみやすさを両立しています。

 

 

学校・教育系サイトも世代に刺さるトレンドを意識

 

目白大学2025 MEJINAVI

受験する方々へ向けて目白大学についてのナビサイト。 URL:https://www2.mejiro.ac.jp/univ/mejinavi2025/

 

 

Z世代に向けて設計された、視覚的にも直感的にも親しみやすいデザインが印象的。
メインカラーにはホワイトと淡いグレー、アクセントにミントグリーンやパステルイエローなどビビッドすぎない、ニュアンスカラーが多用されており
「やさしい・柔らかい・今っぽい」印象を演出。Z世代が好む“感度の高いおしゃれさ”に直結します。
セクションごとにスッと切り替わる視差効果やアニメーションは、Z世代が慣れ親しんでいるTikTokやInstagramのUIに近い点もZ世代のトレンドをおさえた構成に。

また、見出しの視認性や読みやすいフォント選びも、UIの親切さを感じさせます。

 

神戸女学院 「推せる大学」

神戸女学院のオープンキャンパス告知サイト URL:https://www.kobe-c.ac.jp/admissions/events/open/

 

 

くすみピンクやベージュ、ライトグレーを基調とした柔らかな色合いは、Z世代に好まれる「ニュアンスカラー」。
トーンを抑えた色使いが“ガーリー”に寄りすぎず、上品さや知性を印象づける点が魅力です。 また、ビビッドな色を多用しないことで、情報に集中できるという効果も。
「推せる〇〇」というZ世代に馴染みある言葉を大胆にビジュアルに取り入れ、共感やシェアしたくなるトーンに。
写真も、在学生のリアルな表情やキャンパスの“映える”風景を活用し、Instagram的な世界観に寄せている点が特徴です。

 

 

【デザイナーの視点】「くすみカラー」人気の背景

くすみカラーとは?PCCSの色体系から見る魅力

「くすみカラー」とは、PCCS(日本色研配色体系)で示されるカラーシステムにおいて、グレイッシュトーン、ダルトーン、ソフトトーンなど、彩度が低くグレーを含んだ濁色系の色合いに分類されます。
ビビッドな純色を基準に、白・黒・グレーを加えることで生まれる「曖昧さ」「やわらかさ」が特徴。
色そのものが主張しすぎず、背景にも溶け込む色調として人気を集めています。色選びに迷ったときにも応用が効く、まさに「万能カラー」の代表格です。

 

資料:日本色研事業株式会社、DICカラーデザイン株式会社

 

なぜ「くすみカラー」が求められているのか?

くすみカラーが人気を集めている背景のひとつは、「自己主張しすぎず、調和を重んじる」現代的な価値観。
グレーを含んだ低彩度の色は、落ち着き・やわらかさ・洗練といった印象を与え、特にミニマル志向やニュアンスを大切にするZ世代・ミレニアル世代に響いています。
現代社会は、SNSのタイムラインが目まぐるしく流れ、情報やトレンドが一瞬で拡散される「高速かつ刺激的」な環境です。
そんなデジタル社会が日常となっているZ世代・ミレニアル世代は特に、心を落ち着ける「静けさ」や「調和」惹かれているのです。

 

住宅やカフェの内装にベージュやグレージュが多用されたり、Z世代・ミレニアル世代向けの化粧品のパッケージがニュアンスカラー中心になっているのはその一例。
くすみカラーは主張しすぎず、空間や人になじむ柔らかさを持っているため、 控えめだけど洗練された自分らしさを表現する色として、くすみカラーが選ばれているのです。

 

Standard Products

 

 

グレーの受容性と日本人の感性

「くすみカラー」のルーツは、江戸時代の文化に深く根ざしています。
江戸時代中期より、贅沢を禁じる「奢侈禁止令」によって、庶民は派手な色や装飾を避けざるを得ませんでした。
そんな中でも、庶民の間で微妙な色のニュアンスで個性を表現する知恵が生まれました。
それが「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」という多様な茶系・灰色系の色名文化です。

 

 

たとえば、「鼠色」といっても「藍鼠」「桜鼠」「煤竹鼠」など、ほんの少し青みや赤みを帯びたグレーが多数存在しました。
これらは一見控えめながらも、実は非常に豊かな表情を持つ色たちで、日本人の「奥ゆかしさ」や「余白を楽しむ美意識」に通じています。
現代のくすみカラー人気も、こうした文化の延長線上にあると考えられます。
グレーが「地味」ではなく「上品・洗練・静けさの象徴」として受け入れられているのは、まさにこの歴史的な感性の蓄積が背景にあるのです。

 

 

Z世代・ミレニアルに共通する「自己表現」×「溶け込む」色選び

 

SNS時代を生きるZ世代やミレニアル世代は、「とにかく目立つ」よりも、「まわりと調和しながら、自分らしさをさりげなく出す」ことを大切にしています。
たとえばコスメでは、濃い色で派手に盛るよりも、素肌感や透明感を活かしたナチュラルなメイクが人気に。
少女のようなあどけなさ(純真)と、大人の女性が持つ色っぽさ(欲)を兼ね備えた中国発の「純欲メイク」や
頬にチークを入れたような血色感を表現するネイルデザイン「チークネイル」も、そんなトレンドの一部。
くすみカラーは、こうした「控えめだけど印象に残る」雰囲気と相性がよく、日常のファッションはもちろん、SNSの投稿にも自然になじみます。

 

 

 

ここまでは、女性デザイナーの視点から、Webデザインにおける配色やくすみカラーの魅力についてお話ししてきました。
でも、「くすみカラー」や「なじむ色」が注目される背景には、もっと大きなトレンドの流れもあります。
次回コラムでは、毎年話題になる「カラー・オブ・ザ・イヤー」や、じわじわ広がる「レトロブーム」など、人々の「好き」に影響するトレンドについてお話しします。
お楽しみに!